Photography
MAILLOL
マイヨール彫刻作品集
マイヨール彫刻は、増浦が本来目指していた写真家としての第一歩を踏み出すきっかけとなった。柔らかな曲線で表現された豊かな肢体は、美しい旋律のように完璧なハーモニーを奏で、見る人の心に響く。当時パリで孤独と絶望の日々を送っていた増浦に、それは限りなく優しく語りかけてきたのであった。やがて撮影した作品の一つが、サロン・ドートンヌというフランスでも由緒ある賞に入賞。
彫刻という3次元(立体)の作品を写真という2次元(平面)に変換することで新しいファインアートが生まれた。以来、ブルデル、ロダンというポスト印象派の巨匠達の彫刻を撮り続け、最後にミケランジェロの彫刻を撮影し、集大成としたのである。
*作品は無題であるため被写体の彫刻名を記している。
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La Rivière
(河)La Rivière
(河)マイヨール晩年の代表作。見る角度や光の具合で様々な水の流れが表現されている。或は、戦時中に慰霊碑として作られたので、時代の激流に呑まれながらも必死で生きる姿を表したとも言われている。
深い緑の中に横たわる像はしなやかで、ゆったりとした河の流れのようだ。
マイヨール美術館作品集の表紙を飾る写真。 -
La Rivière
(河)La Rivière
(河)La Rivièreの胴体部分。マイヨールの作品は、女性の肉体の美しさを表現したものが多い。豊満で柔らかな曲線による構成は、同じポスト印象派であるロダンやブルデルからは感じられないものだ。
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L’Air
(大気)L’Air
(大気)マイヨールの彫刻は自然界からタイトルを取ったものが多い。この作品もその一つだが、マイヨール特有の豊満さはなく、華奢なボディラインが大気の軽やかな流れを表しているようだ。
鮮やかな芝生に映る影もデフォルメされた作品のようで面白く、逆光を利用し敢えて背面から撮影した。 -
Le Monument à Cézanne
(ポール・セザンヌの為の記念像)Le Monument à Cézanne
(ポール・セザンヌの為の記念像)日本でも人気の高い画家ポール・セザンヌに捧げる為に作られた彫刻。しかし依頼主の分裂によってエクス市から受け取りを拒否され、パリ市が買い取ったという。
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L’action enchaîneé
(とらわれのアクション)L’action enchaîneé
(とらわれのアクション)19世紀のフランスの社会主義者ルイ・オーギュスト・ブランキのための記念像。後ろ手に縛られてはいても、その姿は誇り高く、次なるアクションを起こそうとしているようだ。長い獄中生活を送った革命家の自由への希求を象徴している。
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La Montagne
(山)La Montagne
(山)マイヨールにとって、自然はあらゆる行動と思索の源であり、自然こそ唯一の信仰の対象であった。そして女性の肉体は、大自然の秩序と調和、平和と美を象徴するものであった。彼の数多くの女性像は自然のさまざまな現象を示す名称を与えられており、La Montagneもその一つ。
増浦は、顔のアップを捉えたこの作品で、サロン・ドートンヌに入賞している。 -
La nymphe
(ニンフ)La nymphe
(ニンフ)女性の若さと美しさへのオマージュ的な作品。
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La Nuit
(夜)La Nuit
(夜)マイヨールの初期の彫刻の中で最も有名な作品の一つ。
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Ile-de-France
(イル・ド・フランス)Ile-de-France
(イル・ド・フランス)Ile-de-Franceとはパリを首都とする古代フランスの州名。セーヌ、マルヌ、オワーズの3つの河に囲まれた自然豊かで肥沃な土地。女性の肉体をはじめ自然を崇拝したマイヨールはこの地をこよなく愛した。若さ溢れる女性像はまるで大地から生まれてきたばかりのように瑞々しい。
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Le Monument à Cézanne
(ポール・セザンヌの為の記念像)Le Monument à Cézanne
(ポール・セザンヌの為の記念像)オルセー美術館の有名な時計を背景に撮影。波乱な経緯の彫像も、今は静かに時の移りを見つめている。