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GENESIS – ミケランジェロ彫刻作品集

『GENESIS』は、われわれが知るミケランジェロのイメージを軽やかに裏切ってくれる。増浦は、ミケランジェロが生きた時代と同じ条件に身を置くことで、その本質に迫ろうとした。そのため一体を除き全てが自然光で撮影されている。結果、人工の照明では捉えられなかったであろう、光と影が奇跡のように現れた。「光の奇跡」「光の顔」そして「ゴルゴダ」(いずれも作品名)である。

本書の解説の一部を抜粋してみよう。

・・・ローマのサンタマリア・ソプラ・ミネルバ教会で、撮影のために、通常の照明を消してもらい、ほとんど暗闇という環境で、十字架を背負うイエス像にカメラを向けた時のことである。ファインダーをのぞいていた彼の目に、大理石ではなく生気を持って佇むイエスが

見えたという。あわててファインダーから目を離すと、天井から一条の光が、イエス像の聖痕を示すようにその右手に射していた。やがて、その光は、十字架を輝かせ後光のように背中に抜けていった。その現場に立会った神父も「奇跡」という言葉を発し、祈りを捧げたという。感動を遥かに超え、崇高さのあまりに流れる涙を止めようともせず、彼はシャッターを押し続けた・・・。

ミケランジェロの全作品を撮影するという目的で1999年に始まったプロジェクトは、当時、困難を極めていた。資金面の不安も抱えた増浦はプロジェクト中止の決断を迫られていたのだ。そのとき訪れたのがこの“光”であった。神父の祝福を受けたプロジェクトは遂行され、第2、第3の奇跡を呼び、撮影は順調に進んだ。ところが、2001年9月11日に起こった同時多発テロにより、ヴァチカンでの撮影を残したまま未完で終了した。

やがて世界に平和が戻った時、新たな『GENESIS』が生まれるかも知れない。

初版発行:2002年12月31日
発行所:株式会社アートン(日本/東京)

仕様:ハードカバー(ケース付き)
サイズ:310×220×24mm
解説付き(日本語・英語・フランス語・イタリア語のいずれか)
定価:11,000円(+税)